認知症の説明

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認知症とは

人は誰でも年をとると肉体の機能が衰えていきますが、脳もまた年齢による変化がみられてきます。その主な症状として物忘れがあります。生活に大きな支障のない物忘れは、加齢現象と考えられますが、進行した物忘れになると「同じ物を何度も買ったり、金銭管理が出来なくなる」「日時や場所が分からなくなる」「ごはんを食べたのをすぐに忘れる」「自分でしまった物の場所を忘れて盗んだと怒りだす」など様々な問題行動もみられてきます。このような場合は、「認知症」が疑われます。認知症の治療は、かかりつけ医による進行予防の治療を受けられる場合も多いですが、周辺症状として幻覚、妄想、抑うつ、せん妄、興奮、攻撃的言動、徘徊などのBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)といった症状や行動が目立ち始めた場合には精神科医が対応することが多くなります。
H25年7月より当院では、大分大学で認知症を専門として診察されている石井先生をお招きして「もの忘れ外来」を開設しております。詳しくは、診療時間・診療科目をご覧ください。

画像診断

認知症の診断は、記憶の検査やご家族に生活の様子をお聞きする以外に画像での検査が重要になります。当院では近くの総合病院に協力をお願いして、認知症が疑われる場合には頭部MRI検査を受けていただいております。一般的に頭部MRI(検査時間30分程度)は、頭部CTより検査時間がかかりますが、より詳しく脳委縮の状態(海馬などの重要部位)や慢性的な血流低下による変化部位(慢性虚血性変化)を判断できます。また疑われる認知症のタイプによりましては、脳血流SPECTを同時に受けていただくこともございます。
頭部MRI撮影の流れ
1. 当院を受診。認知症の疑いあり。
2. 当院より総合病院に連絡し、ご希望の日時に予約をお取りします。
3. 予約された日に総合病院を受診されて下さい。その際に受け付けにて当院からの紹介状をお渡し下さい。
4. 頭部MRI撮影
5. 帰りに画像のデータが入ったCD-Rを受取っていただきます。
6. 次回の当院での診察の際にCD-Rを持参されてください。

1.アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いタイプです。脳の神経細胞が減少していき、脳が萎縮してしまう認知症です。症状としては、物忘れがゆっくりと進行するのが特徴です。昔の出来事はよく覚えていることが多いですが、最近の出来事や少し前の出来事を覚えることが難しくなります。そのため同じ事を何度聞いたり、物を置いた場所を忘れてしまい、誰かが盗んだと訴えるような物盗られ妄想がみられる場合もあります
治療
ドネペジル(アリセプト)というアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる薬が日本で最初に発売されました。最近では、ドネペジルと同様にアセチルコリンエステラーゼを阻害して神経間のつながりを良くするガランタミン(レミニール)やリバスチグミン(イクセロンパッチ)という薬が発売されています。また違った作用機序のお薬としてNMDA受容体に作用するメマンチン(メマリー)という薬があります。これは他の認知症の薬と併用して使うことができます。薬の治療以外では適度な運動をしたり、外出や会話をする機会を作るなど環境から刺激を受けることも重要です。
アルツハイマー型認知症の方の頭部MRI画像
図1)アルツハイマー型認知症の方の頭部MRI画像
黒い部分が萎縮のために出来た隙間です。海馬も委縮しています。

2.血管性認知症

脳の血管の障害により、その部分の脳の働きが悪くなり、認知症になることがあります。このような認知症を血管性認知症といいます。血管性認知症には、大きな脳梗塞がある場合、小さなラクナ梗塞が多発している場合、脳血流が慢性的に低下している部位に変化が起きている場合などがあります。危険因子としては、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙歴、心疾患等があります。
症状
障害された部位によって違ってきます。○○をする能力は低下しているが、△△する能力はしっかりしているという様にまだらに障害されることもあります。記憶障害がひどくても性格や判断力は保たれていることが多いのも血管性認知症の特徴です。更に、歩行障害、手足の麻痺、呂律が回りにくい、尿失禁、抑うつ、感情失禁などの症状がみられることもあります。

治療
まずは再び脳梗塞を起こさないように危険因子をコントロールすることが重要です。状態に応じてですが、再び血管が詰まらないように血栓を作りにくくするような薬を使う場合もあります。またうつ症状がみられた際には抗うつ薬を使うこともあります。
脳血管性認知症の方の頭部MRI画像
図2)脳血管性認知症の方の頭部MRI画像
白い部分が、慢性的に血流が低下し変化が起きた場所です。黒く抜けたところが脳梗塞の部位です。この画像は、平成29年5月23日テレビ朝日放送の「林修の今でしょ!講座3時間スペシャル」で脳血管性認知症の画像例として放送されました。

3.レビー小体型認知症

レビー小体という名前は聞き慣れないかもしれませんが、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症とともに三大認知症といわれるほど頻度の高い認知症で、日本では高齢者の認知症の約20%を占めます。記憶障害を中心とする認知症があり、ありありとした幻視(目の前で居ないはずの人が立っているなど)やパーキンソン症状(体が固くなる、動作が遅くなる、転倒を繰り返す等)が現われやすく、日により変動がみられ意識がハッキリしていたり、ボーとしていたりすることがあるとこの病気が疑われます。しかし、初期には認知症の症状が目立たず、幻覚や妄想が先に出現する場合や、うつ症状やパーキンソン症状が初めに出現する場合もあります。
治療
アルツハイマー型認知症の治療薬が非常に有効であるといわれています。

4.前頭側頭葉型認知症

脳の前頭葉や側頭葉を中心に委縮がみられます。
症状
人格の変化(礼節を保った行動がとれなくなる、約束を守らない、身だしなみが乱れる、性的な発言や行動が増えるなど)、行動の変化(万引きをする、同じ場所に座る・同じ道を散歩する・手を叩き続けるなど同じ行動を繰り返す、突然立ち去る)、情動の変化(多幸的になるなど)などがみられます。

画像
前頭葉と側頭前方部の委縮やシルビウス裂の拡大などがみられます。

治療
根治療法は確立しておらず対症療法が中心になります。セロトニンに作用する薬が問題行動に有効な場合があります。